周りに流されやすいと感じたら。セルフコンパッションで「自分軸」を見つけるヒント
周りに流されやすいと感じるあなたへ
日々の生活の中で、「どうしたらいいんだろう」と迷った時、つい周囲の意見や雰囲気に合わせてしまうことはありませんか。友人との予定、職場の人間関係、家族からの期待など、知らず知らずのうちに周りの声に流されてしまい、「あれ、本当はこうしたかったのに」と後から疲れてしまう。そんな経験をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。
周りの意見を尊重することは大切なことです。しかし、それが度を超すと、自分の本当の気持ちや価値観が見えなくなり、自分が何を望んでいるのか、どう生きたいのかが分からなくなってしまうことがあります。これは「自分軸」が揺らいでいる状態と言えるかもしれません。そして、この状態が続くと、心が疲弊し、自己肯定感がさらに低くなってしまうことがあります。
この記事では、周りに流されやすいと感じる方が、セルフコンパッションを取り入れながら、自分らしい「軸」を見つけ、心地よく生きるためのヒントをご紹介します。
なぜ周りに流されやすくなってしまうのでしょうか
周りに流されやすい背景には、いくつかの理由が考えられます。一つは、他者からの承認を得たいという気持ちが強い場合です。「良い人だと思われたい」「嫌われたくない」という思いから、自分の意見を抑え、周囲に合わせてしまうことがあります。
また、自分自身の価値観や判断に自信がないことも関係しています。「自分の考えは間違っているかもしれない」「他の人の意見の方が正しいのではないか」と感じるため、自分で決めるよりも誰かの意見に乗っかる方が楽だと感じてしまうのです。
さらに、争いを避けたい、波風を立てたくないという平和主義的な傾向も影響することがあります。自分の意見を主張することで、相手との間に摩擦が生じることを恐れ、結果として自分の気持ちを押し殺してしまうのです。
自分に厳しく、常に完璧を目指してしまう方ほど、他者の期待に応えようとし、自分自身の内なる声に気づきにくくなる傾向があるかもしれません。
周りに流されることが心と体に与える影響
常に周囲に合わせようとすることは、想像以上に心と体に負担をかけます。
心には、以下のような影響が出ることがあります。
- 疲労感: 自分の本心と異なる行動を取り続けることで、心がすり減り、慢性的な疲労を感じやすくなります。
- 不満や後悔: 後になって「やっぱりあの時こうすればよかった」と後悔したり、自分の気持ちを言えなかったことへの不満が募ったりします。
- 自己肯定感の低下: 周囲に合わせるばかりで自分の意見を持たないと感じることで、「自分には価値がないのではないか」と感じてしまうことがあります。
- 自分が分からなくなる感覚: 自分の本当の感情や考えが何なのかが曖昧になり、「自分らしさ」を見失うことがあります。
体にも、以下のような影響が現れることがあります。
- 体の緊張: 無意識のうちに体に力が入ったり、肩や首が凝ったりすることがあります。
- 睡眠の質の低下: 心のモヤモヤが続き、寝付きが悪くなったり、眠りが浅くなったりすることがあります。
- 漠然とした不調: ストレスが溜まることで、頭痛や胃の不調など、原因のはっきりしない体の不調を感じることがあります。
心と体は密接に繋がっています。心が疲れると体も重くなり、体が不調だと心も晴れやかになりにくいものです。周りに流されることで生まれる心の負担は、確実に体にも影響を与えているのです。
「自分軸」とは、頑固さやわがままとは違います
「自分軸を持つ」と聞くと、「自分の意見ばかりを主張して周りの意見を聞かない」「わがままになる」というイメージを持つ方もいるかもしれません。しかし、私たちがここで考える「自分軸」は、そういった頑固さや自己中心的なことではありません。
「自分軸」とは、自分の感情、価値観、ニーズを尊重し、それらを大切にしながら、状況に応じて柔軟に判断し、自分の人生を選択していくための内なる基準のことです。
周りの意見に耳を傾けることは大切ですが、それは自分の軸を持った上で行うことであり、周りの意見に自分の全てを委ねてしまうこととは異なります。自分軸がしっかりしている人は、他者との違いを恐れず、健全な関係性を築きやすくなります。
セルフコンパッションが「自分軸」を見つけるのをどう助けるのか
自分に厳しく、自己肯定感が低いと感じる方が自分軸を見つけるためには、まず自分自身に対する接し方を変えることが有効です。ここでセルフコンパッションが重要な役割を果たします。
セルフコンパッションとは、「困難な状況にある自分」に対して、まるで親しい友人に対するように、優しさ、理解、そして温かい気持ちを持って接することです。
セルフコンパッションを実践することで、以下のよう周りに流されやすい傾向を和らげ、「自分軸」を見つける手助けになります。
- 他者の評価への過度な依存を手放す: 自分自身に優しく、価値があると思えるようになると、他者からの承認や評価がなくても大丈夫だと思えるようになります。これにより、他者の顔色を過度に伺う必要が減ります。
- 自分の感情やニーズを受け入れる: セルフコンパッションは、自分のネガティブな感情や困難な状況を否定せず、ありのままに受け入れる練習です。これは、自分の内なる声(感情やニーズ)に気づき、それを尊重することに繋がります。
- 他者との違いを恐れなくなる: 自分に優しくなることで、「自分は自分であることで十分だ」と感じられるようになります。他者と意見や考え方が違っても、「自分はこれでいいんだ」と思えるようになり、無理に周りに合わせる必要がなくなります。
- 自分を責める「内なる声」を静める: 周りに流されてしまった時、「どうして自分はこうなんだ」と自分を責めてしまいがちです。セルフコンパッションは、このような自己批判の声を和らげ、優しさで自分を包み込むことを促します。これにより、冷静に自分の状況を振り返り、本当の気持ちに気づきやすくなります。
セルフコンパッションは、自分軸という幹を育てるための、温かく肥沃な土壌のようなものです。自分への優しさが、内なる強さと安定感を育んでくれます。
セルフコンパッションを使った「自分軸」を見つける具体的なステップ
では、具体的にどのようにセルフコンパッションを取り入れながら自分軸を見つけていけば良いのでしょうか。焦らず、小さなステップから試してみてください。
ステップ1: 周りに流されている自分に気づく - まずは優しく観察
「あ、今、周りに合わせようとしているな」「本当は嫌なのに、断れなかったな」と、周りに流されている自分に気づくことから始めます。これは自分を責めるための観察ではありません。「ただ、そうなんだな」と、善悪の判断を挟まずにありのままの自分を観察します。
その時、どんな気持ちを感じているでしょうか?(例えば、不安、疲労、諦めなど) 体のどこかに変化はありますか?(例えば、肩が凝る、お腹が痛くなる、ため息が出るなど)
自分の内側で起こっていることを、好奇心を持って見つめる練習です。
ステップ2: その時の自分に優しさを向ける - セルフコンパッションの実践
周りに流されてしまった自分に気づいたら、「どうしてまたこうしちゃうんだろう」と自己批判するのではなく、優しさと思いやりを向けます。
心の中で、または声に出して、「周りに合わせるの、疲れるよね」「本当はやりたくなかったのに、大変だったね」と、自分自身に温かい言葉をかけてみてください。
これは弱いことではなく、自分自身を労わるための大切な行為です。そして、周りに合わせてしまうのは、あなた一人だけが経験していることではなく、多くの人が人間関係の中で感じる困難の一つであること(共通の人間性)を思い出してみてください。「自分だけじゃないんだ」と思うことで、少し心が軽くなることがあります。
ステップ3: 自分の本当の気持ちやニーズを探る
流されてしまった状況や、これから何かを決めようとする時、少し立ち止まる時間を作ります。静かな場所で数分間、目を閉じて深呼吸をするだけでも良いでしょう。
そして、自分自身に問いかけます。 「今、私はどう感じているだろうか?」 「本当は、どうしたいのだろうか?」 「私にとって、何が大切だろうか?(価値観)」 「今、自分は何を必要としているだろうか?(ニーズ)」
最初は、自分の本当の気持ちが分からなかったり、「そんなこと考えても無駄だ」という否定的な声が聞こえてきたりするかもしれません。それでも大丈夫です。ただ問いかけ続けることで、少しずつ自分の内なる声に気づけるようになります。ジャーナリング(書く瞑想)も、自分の気持ちを整理し、内なる声を聞くのに役立ちます。
ステップ4: 小さな選択から「自分の声」を尊重する
急に大きな決断で自分軸を発揮しようとする必要はありません。まずは、日常の小さな選択から練習を始めます。
今日のランチは何が食べたいか? 休日、本当は何をして過ごしたいか? どの服を着ると一番心地よいか?
周りの意見や「こうあるべき」という考えではなく、「自分が心地よい方」「自分が本当にしたい方」を意識して選んでみてください。小さな「自分の声」を大切にする経験を積み重ねることで、自分自身への信頼感が育まれていきます。
ステップ5: 完璧を目指さない - 優しく軌道修正
自分軸を持って行動しようとしても、時にはまた周りに流されてしまうことがあるでしょう。それは全く問題ありません。
「あ、また流されちゃったな」と気づいたら、ステップ1や2に戻り、自分を責めずに優しく観察し、自分に温かい言葉をかけてください。そして、「次にもう一度、自分の気持ちに耳を傾けてみよう」と、優しく軌道修正する機会を与えます。
自分軸を持つことは、常に自分の意見を押し通すことではありません。状況によっては周りに合わせる柔軟さも必要です。大切なのは、流されてしまった時に自分を責めすぎず、自分への優しさを忘れずに、また自分の内なる声に耳を傾ける努力を続けることです。
まとめ
周りに流されやすいと感じる時、それは決してあなたが弱いからではありません。多くの人が経験する、人間関係の中で生じる自然な心の動きでもあります。
セルフコンパッションは、そんな自分に優しく寄り添いながら、自分らしい「軸」を育んでいくための力強い味方です。自分に優しくなるほど、他者の評価に囚われず、自分の内なる声に耳を傾け、大切な自分の価値観に基づいて選択できるようになります。
時間はかかるかもしれませんし、すぐに完璧な自分軸ができるわけではありません。しかし、自分への優しさを忘れずに、今日ご紹介したステップを一つずつ試してみることで、きっと心地よい自分らしい生き方へと繋がっていくでしょう。
ご自身のペースで、優しく、このプロセスを続けてみてください。あなたの内側には、あなただけの素晴らしい声と価値観が確かに存在しています。