ぐるぐる思考に疲れたら。セルフコンパッションで自分に優しくなるヒント
止まらない「ぐるぐる思考」に、心が疲れていませんか
仕事のこと、人間関係のこと、将来のこと。一度考え始めると、頭の中で同じ考えがぐるぐると巡り、なかなか止まらない。夜眠ろうとしても考え事が頭から離れず、気づけば心も体もへとへとになっている。そんな経験はございませんか。
完璧主義であったり、責任感が強かったりする方ほど、小さな失敗や気にかかる出来事について、必要以上に考え込んでしまいがちです。これは決して悪いことではありませんが、あまりに考えすぎると、不安や自己否定感が強まり、心身のバランスを崩してしまうこともあります。
このような「ぐるぐる思考」は、多くの方が経験することです。自分だけが抱えている悩みではないと知ることは、少しだけ心を軽くしてくれるかもしれません。そして、この止まらない思考の流れに優しく向き合い、自分自身を労わるための方法があります。それが、セルフコンパッションを取り入れたセルフケアです。
この記事では、考えすぎてしまう自分に優しく寄り添い、心の負担を和らげるためのセルフコンパッションの実践法をご紹介します。
セルフコンパッションで「考えすぎる自分」に優しく寄り添う
セルフコンパッションとは、困難な状況や自分の欠点、失敗に直面した時に、自分自身を理解し、温かい心で接することです。まるで親しい友人がつらい状況にある時に優しく寄り添うように、自分自身にも同じように思いやりを向けることです。
「ぐるぐる思考」で心が疲れている時、私たちはつい自分を責めてしまいがちです。「どうしてこんなに考えてしまうんだろう」「もっと強い心を持たなくては」など、自分に厳しくなってしまうことはありませんか。
セルフコンパッションは、このような自分を責める態度とは真逆のアプローチです。考えすぎてしまう自分を否定するのではなく、「ああ、今自分はたくさん考えていて、疲れているんだな」と、ありのままの状態を温かく受け入れます。これは思考を「止める」ことではなく、思考に「優しく寄り添う」ことなのです。
ぐるぐる思考が心身に与える影響
考えすぎてしまう状態が続くと、心と体の両方に様々な影響が現れることがあります。
- 心への影響: 不安感、焦燥感、ゆううつな気分が増す、集中力が低下する、決断力が鈍る、楽しさを感じにくくなる、自己肯定感が低くなる。
- 体への影響: 疲労感、肩こりや頭痛などの体の緊張、胃の不調、睡眠障害、免疫力の低下。
このように、心で起こっている「考えすぎ」は、私たちの体の状態と密接に繋がっています。心が緊張すると体も緊張し、体が疲れると心もさらに疲れやすくなるという悪循環に陥ることもあります。
セルフコンパッションを実践することで、この心身の緊張を緩め、ぐるぐる思考に囚われすぎない心のゆとりを持つことができるようになります。
考えすぎに優しく向き合うセルフコンパッションの実践法
では、具体的にどのようにセルフコンパッションを日々の生活に取り入れ、考えすぎと上手に付き合っていけばよいのでしょうか。いくつか手軽にできる実践法をご紹介します。
1. 思考に「気づく」練習
考えすぎている時、私たちはその思考の中にどっぷりと浸かっている状態です。まずは、自分が今「考えすぎているな」と気づくこと。これがセルフコンパッションの第一歩です。
静かな場所で数分間座り、ゆっくりと呼吸をします。そして、頭の中に浮かんでくる思考を、まるで流れていく雲を眺めるように観察してみましょう。思考に良い悪いの判断をつけず、「あ、今、仕事の心配をしているな」「これは過去の後悔に関する考えだな」と、ただ気づくだけです。思考と自分自身を切り離して捉える練習になります。
2. 思考に「名前をつける」練習
気づいた思考や感情に、簡単な名前をつけてみましょう。「心配事」「不安な気持ち」「後悔の考え」など。心の中でそっとラベルを貼ることで、思考との間に距離が生まれます。「私は不安だ」ではなく、「不安な気持ちが今ここにあるな」と客観的に見ることができるようになります。
3. 自分に「優しい言葉」をかける練習
考えすぎて苦しくなった時、心の中で自分自身に優しく語りかけてみましょう。友人が同じ状況なら、どんな言葉をかけるでしょうか。「大変だね」「疲れたね」「一人じゃないよ」「大丈夫だよ」。自分自身にも、同じように温かい、思いやりのある言葉をかけてあげてください。両手を胸やお腹にあてて、その温かさを感じながら行うと、より心が落ち着くのを感じられるかもしれません。
4. 体の感覚に意識を向ける
考えすぎている時は、頭の中ばかりが忙しくなり、体が置き去りになりがちです。意識的に体の感覚に注意を向けることで、思考から離れ、「今、ここ」に戻ってくることができます。
- 呼吸に意識を向ける: 数回、深くゆっくりと呼吸をします。吸う息、吐く息の体の感覚に集中します。
- 体に触れる: 手で腕をさすったり、肩を回したり、足の裏の感覚に意識を向けたりします。体のどこかに優しく触れることで、自分自身に意識を戻すことができます。
- 軽いストレッチや散歩: 体を動かすことで、固まった心と体をほぐし、思考からリフレッシュすることができます。
これらの実践は、一度に全てを行う必要はありません。今の自分にできそうなもの、心地よいと感じるものから、ほんの数分でも試してみてください。
完璧を目指さなくて大丈夫
セルフコンパッションの実践は、「常に穏やかでいなければならない」ということではありません。ぐるぐる思考が完全に消えなくても、自分を責める必要はありません。大切なのは、「今、自分は考えすぎて疲れているんだな」と気づき、そんな自分に少しでも優しさを向けてみようとすることです。
練習を重ねることで、思考に囚われそうになった時に、一歩引いて自分自身を客観的に見守る力が少しずつ育まれます。そして、自分に優しくする時間が、心の回復力となり、ストレスに立ち向かうためのエネルギーになります。
まとめ
考えすぎてしまうことは、あなたの心が一生懸命に機能している証拠でもあります。そんな頑張っている自分自身を、どうぞ責めないであげてください。
セルフコンパッションは、この止まらない思考の波に立ち向かうための「武器」ではなく、波に揺られている自分自身に「優しく寄り添う」ための温かいブランケットのようなものです。
今日から、考えすぎて心がざわついた時、ほんの一瞬でも良いので立ち止まり、「頑張っているね、大丈夫だよ」と自分自身に語りかけてみませんか。自分に優しくする小さな積み重ねが、心のゆとりとなり、あなたの毎日をより穏やかなものにしてくれるはずです。
心のウェルビーイングを高める旅路を、どうぞ自分自身への優しさと共に歩んでください。