心を満たすセルフケア

自分の「本当の気持ち」に気づくセルフコンパッション。心の声を聞く練習

Tags: セルフコンパッション, セルフケア, 感情, ストレス, 心の声, マインドフルネス, 自己理解

自分の「本当の気持ち」が分からなくなっていませんか

仕事や人間関係のプレッシャーの中で、ふと立ち止まった時に「自分は本当はどう感じているのだろう」「何をしたいのだろう」と、自分の気持ちが分からなくなってしまうことはありませんか。忙しさやストレス、あるいは自分自身への厳しさから、感情に気づくことや、それをそのまま受け入れることが難しくなっているのかもしれません。

私たちは、辛い感情やネガティブな気持ちを抑え込もうとしがちです。弱さを見せたくない、誰かに心配をかけたくない、あるいは自分自身の理想とする姿からかけ離れていると感じたくない、といった思いがあるかもしれません。しかし、そうして感情にフタをすることは、心だけでなく体にも負担をかけ、自分自身の核となる部分から離れていってしまう可能性があります。

この記事では、自分の心の声に気づき、その「本当の気持ち」をセルフコンパッションの視点から優しく受け入れるための方法をご紹介します。自分への厳しさを少し手放し、心の声に耳を傾ける練習を始めるきっかけとなれば幸いです。

なぜ、私たちは自分の気持ちに気づきにくくなるのでしょう

自分の気持ちが分からなくなる背景には、いくつかの要因が考えられます。

まず、日々のストレスや疲労が挙げられます。心身が消耗していると、自分自身の内側に意識を向ける余裕がなくなり、感情に気づきにくくなります。また、常に外部からの情報や他者の評価に晒されていると、内側の感覚よりも外側の基準を優先してしまいがちです。

次に、自分自身への厳しさです。自分に高い基準を設け、「こうあるべき」という理想像から外れる感情(不安、恐れ、悲しみなど)を感じた時に、それを否定したり、打ち消そうとしたりすることがあります。自分自身を批判する声が大きいと、本音の感情は隠れてしまいやすくなります。

さらに、感情への誤解も関係しています。特にネガティブとされる感情は「感じてはいけないもの」「早く克服すべきもの」と考えがちですが、感情は私たちの内側の状態を示す大切なサインです。このサインを無視し続けると、自分が本当に何を感じているのか、何を必要としているのかが分からなくなってしまうのです。

心と体は繋がっている。体が語る「心の声」

心と体は密接に繋がっています。心で感じていることが体に影響を与え、体で起きていることが心に影響を与えるのです。

例えば、ストレスを感じると肩が凝ったり、胃がキリキリしたりすることがあります。これは体が発しているサインであり、「今、私はストレスを感じているよ」「少し休息が必要だよ」という心の声でもあるのです。

しかし、自分の感情に鈍感になっていると、これらの体のサインにも気づきにくくなったり、「疲れているだけ」「体質だから」と見過ごしてしまったりします。体が発する不調は、心の声を聞き逃しているサインかもしれません。自分の本当の気持ちに気づくためには、まず体の感覚に意識を向けることから始めてみるのも良い方法です。

セルフコンパッションで、心の声に優しく耳を傾ける練習

自分の本当の気持ちに気づき、それを受け入れるためには、自分への優しさが欠かせません。ここで役立つのが、セルフコンパッションという考え方です。

セルフコンパッションとは、困難や失敗に直面した時に、自分自身に優しさと理解を持って接することです。自分を批判したり、責めたりするのではなく、ありのままの自分を受け入れ、励ます視点です。

セルフコンパッションには主に3つの要素があります。

  1. 自分への優しさ: 困難な状況や失敗に対して、自分を厳しく裁くのではなく、理解と受容の心で接すること。
  2. 共通の人間性: 自分だけが苦しんでいるのではなく、人生における苦しみや不完全さは誰にでも起こりうる、人間共通の経験であると理解すること。
  3. マインドフルネス: 自分の感情や思考、体の感覚に、良い悪いという判断を挟まず、ただ気づいている状態。

このセルフコンパッションの視点を取り入れながら、心の声を聞く練習を始めてみましょう。

1. 体の感覚に意識を向ける練習

まずは、呼吸や体の感覚に意識を向けてみます。座ったまま、あるいは横になったまま、数分間目を閉じます。 * 今の呼吸は浅いか、深いか。速いか、遅いか。呼吸そのものを変えようとせず、ただ観察します。 * 体に意識を向けます。肩や首周りに力が入っていないか。お腹のあたりはどう感じているか。手のひらは温かいか、冷たいか。 * 体のどこかに特定の感覚(痛み、張り、温かさなど)があれば、そこに意識を向けてみます。

体に意識を向けることは、頭の中でぐるぐる考えることから一時的に離れ、今ここにある自分自身の状態に気づく手助けになります。感情はしばしば体の感覚を伴って現れるため、体の声に気づくことは心の声に気づく第一歩となります。

2. 感情に名前をつけてみる練習(感情ラベリング)

感じている感情に、良い悪いという判断を挟まず、ただ名前をつけてみます。 * 「ああ、今少し不安を感じているな」 * 「これは疲労感かもしれない」 * 「少しイライラしているみたいだ」 * 「これは心地よさだな」

感情に名前をつけることで、感情と自分自身の間にスペースが生まれます。感情に飲み込まれるのではなく、「今、私はこの感情を感じている」と客観的に観察できるようになります。ネガティブな感情だけでなく、「楽しい」「嬉しい」「穏やか」といったポジティブな感情にも意識を向けてみることで、自分の「好き」や「心地よさ」のサインにも気づきやすくなります。

3. セルフコンパッションのジェスチャーを取り入れる

辛い感情や体の不調に気づいた時、優しさを自分に向けるジェスチャーを試してみます。 * 両手を胸やお腹に優しく当てる。 * 自分自身をそっと抱きしめるように腕をクロスする。

このジェスチャーをしながら、「大丈夫だよ」「辛いね」「よく頑張っているね」といった、自分への優しい言葉を心の中で唱えてみることも効果的です。体に触れることで、脳に安心感を与えることができます。

4. 小さな「~したい」に気づく練習

壮大な目標や願望ではなく、日常生活の中のほんの小さな「~したい」に意識を向けてみます。 * 「窓を少し開けて新鮮な空気を吸いたい」 * 「暖かいお茶を一杯飲みたい」 * 「好きな音楽を少しだけ聞きたい」 * 「ただぼーっと外を眺めたい」

こうした小さな「したい」は、自分の心や体が今求めていることのサインです。これらの小さな声に気づき、できる範囲で満たしてあげる練習をすることで、自分の「好き」「心地よさ」といった、より根源的な気持ちに気づく道が開けていきます。

心の声を聞くことは、自分自身を大切にすること

自分の本当の気持ちに気づく練習は、すぐに劇的な変化をもたらすものではないかもしれません。長年の習慣によって感情にフタをすることに慣れてしまっている場合、難しさや戸惑いを感じることもあるでしょう。

大切なのは、完璧を目指すことではなく、繰り返し練習することです。そして、その練習の中で、うまくいかない自分や、再び感情を抑え込んでしまう自分に気づいた時も、自分を責めずに優しさを持って接することです。ここでもセルフコンパッションが力を発揮します。

自分の心の声に耳を傾け、その気持ちをセルフコンパッションで受け入れることは、自分自身を深く理解し、大切にすることに繋がります。自分の内側に意識を向ける時間を持つことで、ストレスに振り回されにくくなり、自分にとって本当に必要なことや、心地よい選択ができるようになっていくでしょう。

今日から、ほんの数分でも良いので、自分の体と心に意識を向ける時間を持ってみませんか。小さな一歩が、あなたのウェルビーイングを高める大きな力になるはずです。