自分に優しくなる練習。毎日の中に隠れた「自分の良いところ」を見つけるセルフコンパッション
自分に厳しくなりがちなあなたへ
日々の忙しさの中で、私たちはつい自分自身に厳しくなりがちです。「もっと頑張らなくちゃ」「あれもできていない」と、できていないことや欠点ばかりに目が行き、自分の良いところが見えにくくなっていませんか。
特に、仕事や人間関係のストレスを抱えていると、自分を責める気持ちが強まり、「どうせ私なんて」という考えに囚われてしまうこともあるかもしれません。しかし、そのような心の状態は、心身の疲れをさらに増幅させてしまう可能性があります。
この記事では、自分に優しく寄り添いながら、毎日の中に隠れている「自分の良いところ」を見つける練習をご紹介します。セルフコンパッションの考え方を取り入れることで、少しずつ自己肯定感を育み、心が軽くなるヒントを見つけていきましょう。
なぜ、自分の良いところが見つけにくいのでしょうか?
私たちは、生きていく上でネガティブな情報に注意を向けやすい傾向があります。これは、危険を回避するために進化の過程で培われた本能のようなものと言われています。しかし、この傾向が強すぎると、自分の失敗や欠点ばかりが目に付き、良い点が見えにくくなってしまいます。
また、社会や他者からの評価を気にしすぎたり、完璧を目指しすぎたりすることも、自分に厳しくなる原因となります。「~ねばならない」という思い込みが強いほど、できていない自分を許せなくなってしまうのです。
このような状態が続くと、心は常に緊張し、リラックスすることが難しくなります。そして、心と体は密接に繋がっているため、心の緊張は肩こりや頭痛、消化不良といった体の不調としても現れることがあります。
セルフコンパッションが「自分の良いところ」を見つける鍵
ここで、セルフコンパッションの考え方が役立ちます。セルフコンパッションとは、困難や失敗に直面したときに、自分自身に理解と思いやりを持って接することです。セルフコンパッションには、主に3つの要素があると言われています。
- 自分への優しさ(Self-Kindness): 自分の苦しみや失敗に対して、批判せず、優しく理解しようとすることです。他人が困っているときに優しくするように、自分自身にも優しく接します。
- 共通の人間性(Common Humanity): 困難や失敗、不完全さは誰にでもある、人間共通の経験であると認識することです。自分だけが特別なわけではない、という視点を持つことで、孤独感や「自分だけがダメだ」という思い込みから解放されます。
- マインドフルネス(Mindfulness): 今この瞬間の自分の思考や感情、感覚に、批判せず、ありのままに気づくことです。ネガティブな感情に囚われすぎず、かといって否定もせず、客観的に観察します。
セルフコンパッションを実践することは、自分の欠点や失敗だけでなく、自分の良いところや頑張りにも、優しく、そして偏りなく目を向けることを含みます。特に「自分への優しさ」は、自分の良いところを見つけ、受け入れる上で非常に重要な要素となります。完璧ではない自分自身をまるごと受け入れようとする姿勢が、隠れた良い点に気づくための土壌となるのです。
毎日の中に隠れた「小さな良いところ」を見つける練習
自分の良いところを見つけることは、特別なことや大きな成果を探すことだけではありません。日々の暮らしの中に、当たり前のように存在している「小さな良いこと」に意識的に目を向ける練習です。ここでは、手軽に試せるいくつかの練習をご紹介します。
1. 一日の終わりに「良いことリスト」を作る
寝る前に数分間、静かな時間を作り、今日一日を振り返ってみましょう。そして、「今日、私が頑張ったこと」「私が誰かに優しくできたこと」「私が楽しかったこと」「私が心地よいと感じたこと」などを、どんなに小さなことでも良いので3つ書き出してみます。
- 朝、予定通りに起きられた。
- 仕事で、一つのタスクを終わらせた。
- 疲れていたけれど、夕食を作った。
- 駅で道を尋ねられた人に、親切に教えることができた。
- 道端に咲いている花を見て、心が和んだ。
- 好きな音楽を聴きながら通勤した。
これらはすべて、あなたの行動や感じたことの中にある「良いところ」や「良い瞬間」です。リストに書き出すことで、無意識のうちにスルーしていた自分の良い側面に意識的に気づくことができます。
2. 自分に優しい言葉をかける時間を持つ
私たちは、親しい友人や家族が落ち込んでいるとき、優しい言葉をかけます。自分自身にも、同じように優しい言葉をかけてみましょう。特に、何かうまくいかなかったり、疲れたりしたときに、「大丈夫だよ」「よく頑張ったね」「大変だったね」と心の中で語りかけてみてください。
最初は気恥ずかしいかもしれませんが、この行為は自分自身の味方になる練習です。優しい言葉をかけることで、心に安心感が生まれ、自分の良い面に目を向けやすくなります。鏡を見ながら自分に微笑みかけてみるのも良いでしょう。
3. 五感を使って「心地よさ」を味わう
美味しいものをゆっくり味わう、好きな香りのアロマを焚く、お気に入りの肌触りの服を着る、自然の音に耳を澄ます、美しい景色を眺めるなど、五感を使って心地よさを感じる時間を持つことも、自分の中の「良いこと」に気づく練習です。
心地よさを感じるということは、あなたがその瞬間、満たされているということです。この「満たされている状態」や「心地よさ」そのものも、あなたの人生における価値であり、「良いこと」の一つと捉えることができます。感覚に意識を向けるマインドフルな時間は、今ここにある自分の良い状態に気づくことにも繋がります。
4. 意図的に自分を褒める
「自分を褒めるなんて、なんだか大げさで照れくさい」と感じるかもしれません。しかし、どんなに小さなことでも良いので、意識的に自分を褒める習慣をつけてみましょう。
- 今日はいつもより5分早く起きられた。偉い!
- 面倒だったけれど、ゴミ出しができた。えらい!
- 新しいことを一つ学んだ。素晴らしい!
- 疲れているのに、笑顔で対応できた。よくやった!
このように、大きな成果でなくても構いません。日々の小さな行動や努力、そして自分の存在そのものを認めて褒めることで、自己肯定感は少しずつ育まれていきます。これは、自分自身に「あなたは価値のある存在だ」というメッセージを送ることになります。
これらの練習は、すべてセルフコンパッションの実践です。完璧にできなくても大丈夫。無理なく、できることから、ほんの数分でも良いので、日常生活に取り入れてみてください。
心と体の繋がり:自分を肯定することの力
自分の良いところに目を向け、肯定的に捉えることは、心だけでなく体にも良い影響を与えます。自己否定的な考えは、ストレス反応を引き起こし、心拍数の増加、筋肉の緊張、免疫機能の低下などに繋がることがあります。
一方で、自分を肯定し、大切にするセルフコンパッションの実践は、リラクゼーション反応を促すことが研究で示唆されています。心が穏やかになると、体の緊張が和らぎ、呼吸が深くなり、消化器系の働きも整いやすくなるなど、心身全体のリラックスに繋がります。
自分の良いところに気づく練習は、単に気分を良くするためだけでなく、心身の健康を高めるためのセルフケアでもあるのです。
まとめ
「どうせ私なんて」と感じてしまう時、自分の良いところは霞んで見えにくいかもしれません。しかし、あなたはすでに、毎日の中でたくさんの小さな良いことを行い、良い面を持っています。ただ、それに気づき、認めてあげる習慣がないだけなのです。
この記事でご紹介した「良いことリスト」を作る、優しい言葉をかける、五感で心地よさを味わう、自分を褒める、といった練習は、自分自身に優しく寄り添い、隠れた良い点に光を当てるためのものです。これはセルフコンパッションの実践であり、自分を愛し、労わる大切なプロセスです。
すぐに大きな変化を感じられなくても、焦る必要はありません。完璧を目指すのではなく、今日からできる小さな一歩を踏み出すことが大切です。毎日の中に隠れたあなたの良いところに気づく練習を続けることで、心が少しずつ軽くなり、自分自身との関係がより穏やかで温かいものになっていくことでしょう。
今日から、あなたの毎日の中に、あなた自身の良いところを見つける時間を作ってみませんか。