当たり前の自分に「ありがとう」。セルフコンパッションで育む自己肯定感
日常の忙しさの中で、自分のことを「当たり前」だと思っていませんか
私たちは日々の生活の中で、仕事や家事、人間関係など、様々な役割をこなしています。責任感が強く、周りの期待に応えようと頑張るほど、「できて当たり前」「もっと頑張らなくては」と自分に厳しくなりがちです。
そうしているうちに、いつの間にか自分自身の存在や、日々の小さな努力、頑張りを「当たり前」のこととして見過ごしてしまうことがあります。そして、「自分には価値がないのではないか」「何かが足りない」といった思いに囚われ、自己肯定感が揺らいでしまうこともあるかもしれません。
この記事では、セルフコンパッションの考え方を取り入れながら、「当たり前の自分」に感謝することで、どのように心を温め、自己肯定感を育んでいくことができるのかをご紹介します。日々の疲れやストレスを感じている時こそ、自分自身に優しく目を向け、感謝の気持ちを向けてみませんか。
なぜ「自分への感謝」が心を満たすセルフケアになるのか
「自分への感謝」と聞くと、少し照れくさいと感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、これは自分を甘やかすことでも、特別なことをすることでもありません。セルフコンパッションの視点から見ると、自分への感謝は、ありのままの自分を受け入れ、大切にすることに繋がる自然な行為です。
セルフコンパッションには、以下の3つの要素があります。
- マインドフルネス: 辛い感情や状況から目を背けず、かといって囚われすぎず、ありのままに気づくこと。
- 共通の人間性: 苦しみや失敗は自分一人だけのものではなく、誰もが経験する普遍的なものであると理解すること。
- 自分への優しさ: 苦しんでいる時、失敗した時などに、自分を責めるのではなく、理解と労りの心を持って接すること。
自分への感謝は、これらの要素と深く関連しています。忙しさの中で自分の心身の状態にマインドフルに気づき(マインドフルネス)、完璧ではない自分を受け入れ(共通の人間性)、そしてその自分に優しい言葉や気持ちを向ける(自分への優しさ)というプロセスの中に、「自分への感謝」は存在します。「疲れているのに頑張ってくれている体」「失敗しても諦めなかった心」など、日々の自分自身のあり方や行動に目を向け、労いと感謝の気持ちを持つことは、まさに自分への優しさの実践であり、自己肯定感を静かに育む行為なのです。
自分を「当たり前」だと思ってしまう背景には、「〜でなければならない」という社会的な期待や、自分で設定した高い基準があるかもしれません。しかし、あなたが今ここに存在し、日々を過ごしていること自体が、決して「当たり前」ではないのです。日々の小さな一歩、努力、そして完璧ではない自分自身を受け入れること。これらに感謝の気持ちを向けることは、外からの評価ではなく、自分自身の内側から湧き上がる肯定感を育むことに繋がります。
セルフコンパッションを取り入れた「自分への感謝」実践方法
それでは、具体的にどのように「自分への感謝」を日常生活に取り入れていくことができるでしょうか。ここでは、手軽にできる実践方法をいくつかご紹介します。
1. 自分の心と体へ静かに意識を向ける時間を持つ
まず、忙しい日々の中で立ち止まり、今の自分に意識を向けてみましょう。数分間、静かな場所で座り、自分の呼吸に注意を向けます。吸う息、吐く息に意識を集中させるだけで、心と体の状態に気づくことができます。
- 肩に力が入っていませんか。
- 呼吸は浅くなっていませんか。
- 心は落ち着いていますか、それとも少し慌ただしいですか。
このように、自分の心身の状態に気づくこと(マインドフルネス)は、自分への感謝の第一歩です。「今日も一日、私のために動いてくれてありがとう」というように、体一つ一つや、感情の動きに対して、労りの気持ちを向けてみましょう。
2. 「今日の自分」に感謝するリストを作る
これは、ジャーナリングのように書き出す方法でも、心の中で静かに唱える方法でも構いません。一日の終わりに、今日の自分に感謝したいことをいくつか挙げてみましょう。
- 「当たり前」だと思っている自分の行動:
- 朝、ちゃんと起きられたこと。
- 会社や目的地まで無事にたどり着いたこと。
- 食事を作り、食べたこと。
- 誰かの話を聞いてあげられたこと。
- 疲れていても、やるべきことを一つでも片付けたこと。
- 自分の体の機能:
- 今日も目がしっかりと見えたこと。
- 自分の足で歩けたこと。
- 心臓が絶えず動いてくれていること。
- 美味しいと感じられたこと。
- 自分の内面や、とった態度:
- 優しさを忘れないでいられたこと。
- 少し落ち込んだけど、なんとか一日を終えられたこと。
- 新しいことを学ぼうとしたこと。
- 困っている人に手を差し伸べたこと。
リストにする際は、決して特別なことでなくて構いません。呼吸をしていること、心臓が動いていること、ただ存在していること、それ自体が感謝に値することなのです。書き出すことで、自分が日々の生活の中でいかに多くの「当たり前ではない」ことを成し遂げ、また、体や心がどれほど自分を支えてくれているかに気づくことができます。
3. 苦しい時、うまくいかなかった時こそ、自分に優しく「ありがとう」と声をかける
セルフコンパッションは、順調な時だけでなく、苦しい時や失敗した時こそ真価を発揮します。うまくいかなかった時、自分を責めてしまう癖がある方もいらっしゃるかもしれません。そんな時こそ、立ち止まり、自分に優しく問いかけてみましょう。
- 「つらかったね。よく頑張ったね。」(自分への優しさ)
- 「こういう経験は、きっと多くの人もしていることだよ。」(共通の人間性)
- 「この経験から、何を学び、どう成長できるかな。」(マインドフルネスに状況を捉える)
そして、そんな苦しい状況でも、立ち向かおうとした自分、乗り越えようとした自分、少しでも前に進もうとした自分に「ありがとう」と心の中で伝えてみてください。失敗や苦しみの中にいる自分を受け入れ、それでも前に進もうとする自分自身に感謝することは、自己否定のサイクルを断ち切り、自己肯定感を回復させる大きな力となります。
実践を続けるための小さなヒント
自分への感謝の実践は、毎日完璧に行う必要はありません。疲れている日、気分が乗らない日があっても大丈夫です。
- まずは一日数分から始めてみる。
- 寝る前や朝起きた時など、時間を決めて習慣にする。
- どうしても感謝できることが見つからない時は、「今日も無事に過ごすことができた体と心にありがとう」といった、最も基本的なことから始めてみる。
- ネガティブな感情が出てきても、それを無理に打ち消そうとせず、「こういう気持ちになっているんだな」と、ただ気づいてみる(マインドフルネス)。
まとめ
日々の忙しさの中で自分を「当たり前」のこととして扱い、自分に厳しくなってしまうことは少なくありません。しかし、セルフコンパッションの考え方を取り入れ、「当たり前の自分」に意識的に感謝の気持ちを向けることは、自分自身の存在価値を認め、自己肯定感を育むための温かいセルフケアとなります。
完璧でない自分、時に失敗する自分、そして日々を懸命に生きている自分自身に、「ありがとう」という優しい言葉を伝えてみましょう。この小さな習慣が、あなたの心を温め、穏やかで満たされた毎日を育む一歩となることを願っています。